Wi-Fiルーターの箱には、大きな数字が書いてある。
2882、5764、11529。単位はMbps(1秒あたりに送れるデータの量)で、数字が大きい機種ほど値段も高い。
Yahoo!知恵袋で「ルーター 買い替え」を検索すると、13,112件の質問が出てくる。
上位には「どれを買うべきか」と並んで、こんな質問があった。
「ルーターを買い替えようと調べるとwifi6以降がいいとかストリーム数は4…」
数字の大きい機種を買えば、そのぶん速くなるのか。iPhoneで確かめた。
この記事にはアフィリエイトリンクを含みます。紹介した2つの価格・レビューは2026年9月29日1時台時点の楽天市場のものです。表の価格は、楽天市場で2026年9月11日0時台(楽天スーパーSALEの期間中)に集めたものです。
箱の「5764Mbps」は、iPhoneで出る数字ですか?
出ない。iPhoneには、つながる速さの上限がある。
Appleは、iPhoneがWi-Fiでつながる速さの上限(規格上の数字)を、機種ごとに表で公開している。
| iPhoneの機種 | Wi-Fiでつながる速さの上限 |
|---|---|
| iPhone 17 Pro Max/17 Pro/17/Air iPhone 16 Pro Max/16 Pro/16 Plus/16 |
2400Mbps |
| iPhone 15 Pro Max/15 Pro | 2400Mbps |
| iPhone 17e/16e iPhone 14・13・12・11の全機種 iPhone SE(第3世代・第2世代) |
1200Mbps |
| iPhone X | 866Mbps |
出典:Apple「Wi-Fi and Ethernet specifications for Apple devices」。表の各欄でいちばん大きい数字を載せた。
⚠️ iPhone 15とiPhone 15 Plusは、Appleの表の2400Mbpsの欄と1200Mbpsの欄の両方に載っている。どちらが正しいかはこの表からは決められないので、上の表には入れていない。
どのiPhoneも、上限は2400Mbps以下である。
iPhoneのアンテナの構成は「2×2」(送る側2本・受ける側2本のアンテナで通信する構成。Appleの表の記載)である。
ルーターを作る側も、同じことを書いている。NECは自社のルーター「Aterm」について、こう説明している。
「Aterm は4×4のアンテナであり、接続する Wi-Fi 端末が2×2のアンテナの場合、2×2を超える値は出ないということです。」
∴ ルーターの箱の数字がいくら大きくても、iPhone 1台がつながる速さの上限は、iPhoneの側で決まる。
売り場の数字は、どう並んでいますか?
2026年9月11日、楽天市場を「Wi-Fiルーター」「無線LANルーター」の2語で検索し、重複を除いた926件を集めた。
そこから収納ラック・中古・持ち運び用のモバイルルーター・レンタル・中継器など、家に置くルーター本体でないもの412件を外し、514件を数えた。
ルーターは、帯(電波の通り道。多くのルーターは5GHzと2.4GHzの2つを持つ)ごとに速さの数字を書いている。
⚠️ 速さの数字は、「5764+1376Mbps」のように帯ごとの内訳を書いている175件だけで比べた。数字を1つしか書いていない出品は、合計の数字なのか1つの帯の数字なのか区別できないので混ぜていない。
表の「規格」はWi-Fiの世代で、Wi-Fi 5→6→7と新しくなる。価格は中央値(安い順に並べたときの真ん中の値段)。
| 規格 | いちばん速い帯の数字 | 件数 | 価格の中央値 |
|---|---|---|---|
| Wi-Fi 7 | 2882Mbps | 31件 | 14,513円 |
| 5764Mbps | 25件 | 27,980円 | |
| 11529Mbps | 19件 | 63,880円 | |
| Wi-Fi 6 | 1201Mbps | 22件 | 13,487円 |
| 2402Mbps | 24件 | 15,800円 | |
| 4804Mbps | 26件 | 16,980円 |
Wi-Fi 7は、段が1つ上がるごとに、値段の中央値が1.9倍、2.3倍になる。(どれも楽天スーパーSALEの期間中の価格で、セールの後は変わりうる。倍率は決まった法則ではない。)
(Wi-Fi 6は、4804Mbpsの段に安い機種が多く、段と値段がそろっていない。)
そして帯の内訳を書いている175件のうち、114件(65.1%)は、いちばん速い帯が2400Mbpsを超えていた。
帯の内訳を書いている出品の3件に2件は、どのiPhoneの上限よりも大きい数字を書いている。
回線のほうは、どれくらい出ていますか?
家のWi-Fiの先には、光回線がつながっている。回線の速さは、利用者が自分で測った結果を集めている「みんなのネット回線速度(みんそく)」で見られる。
光回線の平均ダウンロード速度は628.3Mbps(直近3か月)だった。
また、一般的な「1ギガ」の契約なら、回線の上限は1000Mbpsである。
∴ 平均で見ると、iPhoneの上限(2400Mbps)より先に、回線の側が頭打ちになる。
iPhoneなら、どの段で足りますか?
規格上の数字だけで比べれば、Wi-Fi 6で、いちばん速い帯(5GHz)が2402Mbpsの段で、箱の数字がiPhoneの上限を上回る。
ただし、この2400Mbpsは、iPhoneがいつでも出せる数字ではない。Appleの表では「ax@5 GHz」「2400 Mbps」「160 MHz」と並んでいて、5GHz帯で160MHzの幅の電波が使えたときの数字である。ルーターの箱の2402Mbpsも同じで、TP-Linkは「2402Mbps(Archer AX3000) Wi-Fi 6 2×2 – 160MHzチャンネル」と書いている。∴ 160MHzの幅が使えないときは、どちらの数字も出ない。
上限が1200Mbpsの機種(iPhone 14以前など)なら、なおさら箱の数字のほうが大きい。
Wi-Fi 7を選ぶ場合も、いちばん下の2882Mbpsの段(中央値14,513円)で、箱の数字がiPhoneの上限を超えている。
その上の段との差は、中央値で5764Mbpsの段が13,467円、11529Mbpsの段が49,367円。この差額は、iPhone 1台がつながる速さの上限を上げない。
テレビにつなぐHDMIケーブルの「8K」も、同じ見方ができる。→ HDMIケーブルは「8K」にすると画質が上がる?
では、上の段を選ぶ意味はありますか?
ある。ただし、速さの上限とは別の理由である。
- MLO(2つ以上の帯に同時につなぐWi-Fi 7の機能)を使う……Appleは、iPhone 17 Pro Max/17 Pro/17/Air/16 Pro Max/16 Pro/16 Plus/16について「Multi-Link Operation (MLO)」に対応すると書いている。この世代のiPhoneで使いたいなら、ルーターもWi-Fi 7にする必要がある
- 規格上の数字が2400Mbpsを超える機器がある……パソコン用のIntelのWi-Fi 7カード「BE200」は「5.8 Gbps (320MHz,4096QAM)」(Intelの公表値。5,800Mbpsにあたる)。SamsungのGalaxy S25は、Wi-Fiの仕様に「EHT320」(電波の通り道が広い320MHzに対応)と書いている。こうした機器と10ギガの回線を組み合わせるなら、上の段が効く
- 同時につなぐ台数が多い、遠い部屋がある……バッファローは、アンテナを4本積んだ機種について「同時にたくさんつないでも大丈夫」「4LDKのマンションや一戸建ての3階もしっかり届きます」と説明している(メーカーの説明である)
⚠️ 「上の段はむだ」ではない。言えるのは、「iPhone 1台の速さの上限としては、どの段でも同じ」というところまでである。
買い替えなくていいのは、どんなときですか?
今のルーターの箱か本体に、5GHz側で2402Mbps以上の数字が書いてあれば、箱の数字はもうiPhoneの上限(規格上の数字)を上回っている。
iPhoneの速さだけを理由に買い替える必要はない。
一方、「Wi-Fi 5」「11ac」と書いてある古いルーター(今回の楽天の出品のうち、帯の内訳を書いているWi-Fi 5の17件では、いちばん速い帯の中央値は867Mbps)なら、上限が2400MbpsのiPhoneとの間に差がある。買い替えで上限が上がるのは、この場合である。
技適は確かめましたか?
確かめた。技適(電波法の基準に合っていることを示すしるし)が確認できない無線機器は、この記事では取り上げない。
楽天の商品説明には、技適について書いていない出品が多かった。そこで、メーカーの日本向けの公式ページの仕様欄で確かめた。
- TP-Link「Archer AX3000」……認証の欄に「FCC, CE, RoHS, TELEC」。TELEC(テレコムエンジニアリングセンター)は、技適の証明を行う機関で、自身のページに、この証明は「総務大臣の登録を受けた登録証明機関のみが行うことができます」とある
- TP-Link「Deco BE22」……認証の欄に「RoHS・VCCI・JATE・PSE・技適」
⚠️ レビューが多いバッファローの機種も候補にしたが、メーカーの公開ページで技適の記載を確かめられなかったので載せていない。技適を取っていないという意味ではない。確かめられなかった、というだけである。
選んだ2つ
箱の数字がiPhoneの上限を上回る段のうち、いちばん下の段から選んだ。
TP-Link Archer AX3000|Wi-Fi 6・2402+574Mbps5GHz側が2402Mbpsで、箱の数字がiPhoneの上限(2400Mbps)を上回る、いちばん下の段。今回集めた出品の中で、レビューの件数が多い機種の1つ。メーカー日本サイトの認証欄に「TELEC」。iPhoneの上限を上回る段で1万円前後¥9,900 ★4.59 (1,858件)Wi-Fi 6/TP-Linkダイレクト 楽天市場店楽天市場で価格を見る
TP-Link Deco BE22|Wi-Fi 7・2882+688MbpsWi-Fi 7のいちばん下の段。iPhone 16・17の世代でMLOを使いたい人向け。メッシュ(同じ機種を足して家中に広げる仕組み)に対応。メーカー日本サイトの認証欄に「技適」。MLOを使うならこの段で足りる¥17,800 ★4.63 (68件)Wi-Fi 7/TP-Linkダイレクト 楽天市場店楽天市場で価格を見る
この記事で調べたこと
- iPhoneの上限:Apple「Wi-Fi and Ethernet specifications for Apple devices」。ページの本文を保存し、表の数字を自分で抜き出した(要約の機能に読ませると、機種と数字の組み合わせを取り違えたため)
- ルーター側の説明:NEC Atermサポート「ストリーム数やアンテナ数を知りたい」
- 楽天の出品:楽天市場の価格は2026年9月11日0時台(楽天スーパーSALEの期間中)に集めたもの。「Wi-Fiルーター」「無線LANルーター」の2語。検索語に速さや規格の語は入れていない。楽天の標準の並び順(売れている順に近い)の上位なので、売れている商品に寄っている
- 数え方の確認:速さの数字を読み取る仕組みに、わざと書き方の違う例(「最大4803+574Mbps」「10G/5G/2.5G/1G/100Mbps」など)を読ませ、正しく読めることを確かめてから数えた。最初は、有線の端子の「100Mbps」を無線の速さとして拾う誤りがあり、分布のいちばん端の出品を開いて気づいて直した
- 紹介した2つの価格:Deco BE22 は、セールの期間中(0時台〜2時15分)は14,240円だったが、終了後の14時には17,800円になっていた(楽天の商品ページで確認)。カードは14時の価格にしてある。Archer AX3000 は0時台も14時も9,900円
- 回線の速さ:みんなのネット回線速度(みんそく)トップページの、光回線の直近3か月の平均。測定件数は書かれていない
- 速さの数字は、つながる速さの上限(規格上の数字)である。実際にファイルを送ったときに出る速さは、これより低い

