254個中、0個。
楽天市場で「静音マウス」として売られている254個の商品ページを開いて、クリック音の大きさが
dB(デシベル。音の大きさを表す単位。30dBでささやき声くらい)で書かれているかを数えた結果である。
「静音」と書いてあるのだから静かなのだろう、と思って買う。そして「思ったより音がする」となる。
原因は、静音マウスが静かではないからではない。どれくらい静かなのかが、どこにも書かれていないからである。
この記事で言いたいことは1つだけ。
「90%静か」の90%は、いま自分が使っているマウスとの比較ではない。
何を数えたのか?
2026年9月4日、楽天市場で「静音マウス」「マウス 静音 ワイヤレス」の2つの言葉で検索し、
重複と、キーボードとのセット品を取り除いたマウス単体254個の商品ページを対象にした。
数えたのは2つだけ。クリック音の大きさをdBで書いているかと、音が「何%減ったか」を書いているかである。
| 商品ページの記載 | 個数 | 割合 |
|---|---|---|
| クリック音の大きさ(dB) | 0個 | 0.0% |
| 音が「何%減ったか」 | 34個 | 13.4% |
| 音についての数字なし | 220個 | 86.6% |
数え方について1つ断っておく。「20%以上削減」と書いてあっても、開いてみると
包装材のプラスチック重量の話だったものがある。そのため
同じ文の中に「クリック音」か「音」がある場合だけを、音の数字として数えている。
静音マウスなのに音がするのはなぜ?
静音マウスは、無音のマウスではないからである。減らしているのであって、消しているのではない。
問題は、その「減る量」が買う前に分からないことのほうにある。
254個のうち220個は、音について数字を1つも書いていない。「静音」「超静音」という言葉だけが並んでいる。
では、数字を書いている34個なら分かるのか。ここからが本題である。
「90%静か」の90%は、何と比べた90%?
34個の内訳は、ロジクールが22個、メーカー名の出ない製品が12個だった。どちらも「90%」を名乗っている。
ロジクールは、商品ページの注釈に比較の相手を書いている。
*独立ラボによって測定された左クリックのdBA。ロジクールM170との比較
dBAというのは、人の耳が感じる大きさに合わせて重みを付けたdBの測り方のことである。
そしてM170は、ロジクールの静音ではない普通のマウスである。
つまり「90%静か」とは、同じメーカーの、静音ではないマウスと比べて90%という意味になる。
いま自分の机の上にあるマウスとの比較ではない。
条件をさらに細かく書いているページもあった。
独立ラボによって、マウス中心から1メートル離れた場所で測定された左クリックのdBAレベル。ロジクールM170との比較。
一方、メーカー名の出ない12個は「従来モデルより90%の騒音を軽減」と書くだけで、その従来モデルが何かを書いていない。
さらに、そのうち8個は一言一句同じ文だった。
図書館、カフェ、深夜など静かな場所で使用しても周囲の迷惑になりません
この8個は、別々の8つの店が出している別々の商品である。同じ説明文が使い回されている。
比較の相手を型番まで書いていたのは、34個のうち13個。すべてロジクールで、それ以外は0個だった。
なぜ、音の大きさそのものが書かれない?
メーカーが隠しているわけではない。ロジクールは実際に測っている。独立した機関が、1メートル離れて、左クリックの音を測っている。
それでも公表するのは「90%」という比べた結果だけで、「何dB」という単独の数字ではない。
理由は、dBの数字は単独では比べられないことにある。
音の大きさは、マイクをどこに置くか/周りがどれくらい静かか/どう押すかで変わってしまう。
だからロジクールの注釈も「独立ラボ」「1メートル」「左クリック」「M170との比較」と、条件を4つ添えている。
条件を書かずに「◯dB」とだけ載せても、別のメーカーの数字とは並べられない。
比べられる形で書こうとすると、「自社の別のモデルと比べて何%」という言い方になる。
その結果、読者がいちばん知りたい「いま使っているマウスから、どれだけ静かになるのか」だけが、どこにも出てこない。
静音マウスのデメリットは?
数えて分かった範囲で、2つある。
- 無音にはならない。減らしているだけなので、静かな部屋では聞こえる
- 押した手応えが変わることがある。「クリック感はそのままに」と書いてあるモデルもあれば、書いていないモデルもある
そして買わなくていい人もいる。
いま使っているマウスの音が、誰の迷惑にもなっていないなら、買い替える理由はない。
この記事は、音が実際に問題になっている人——夜に家族を起こしたくない人、会議で音を入れたくない人——のためのものである。
では、何を見て選べばいい?
254個を数えたあとに残る手がかりは、1つだけである。
「何と比べて、どういう条件で測った何%なのか」が、そのページに書いてあるかどうか。
書いてあれば、その数字は追いかけられる。書いていなければ、追いかけようがない。
「静音」という言葉自体は、誰でも書ける。254個中220個が、数字なしでその言葉を使っている。
どれを買えばいい?
選んだ基準はこれだけである。
1万円以下で、リンク先の商品ページ自身に、比較の相手(型番)と測定条件が書いてあるもの。
254個のうち13個が残り、すべてロジクールだった。同じロジクールでも、
M220・M221のページには比較の相手が書かれていないため、ここには入れていない。
13個は商品ページの数で、型番としては7つ(M110sn/M240/M331n/M550/M650/M750/M575SP)だった。
ここから、次の順で外している。
- 使い方が違うもの……M575SPは、指でボールを転がして操作するタイプ。手全体を動かす普通のマウスとは操作そのものが別なので、同じ表には並べない
- 同じシリーズの上位モデル……M650・M750はM550と同じシリーズで、基準の書かれ方は3つとも同じ。それならいちばん安いM550を代表として残す
- 有線のM110sn……公式ストアのページには「従来モデルより90%以上軽減」とあるだけで、比較の相手が書かれていない。書いてあるのは別の店のページで、そちらはレビュー0件で価格も高い。この記事は「そのページに書いてあるか」で選んでいるので、ページを取り違えると基準そのものが崩れる
残った3つが、下の3枚である。
もう1つ、条件を足している。
無線のマウスは電波を出す機器なので、日本国内で使うには
技適マーク(電波法の基準を満たした機器に付く小さなマーク。本体の裏や受信機に印刷されている)の表示が要る。
表示のない無線機器を使うと電波法違反になる。国内で正規に売られているものには、この表示が義務づけられている。
ここで挙げるのはすべてロジクールの国内正規品である。
価格・レビューはすべて 2026年9月24日時点の楽天市場(ロジクール公式ストア)のもの(8時台に取り直した)。⚫ 254個を数えたのは 2026年9月4日で、そちらは動かしていない。
いちばん安く条件がそろう|M240 SilentUSBの受信機を挿さずに、パソコンと直接つながるBluetooth接続。小型で左右対称なので右手でも左手でも使える。商品ページに「クリック感はそのままに、従来品と比べてクリック音を90%削減」と書かれ、注釈で比較の相手がM170と明示されている。比較の相手と測定条件を明記¥1,890 ★4.61 (214件)Bluetooth接続/受信機なし/国内正規品楽天市場で価格を見る
電池交換の回数を減らしたい|M331n SILENT PLUSUSBに挿す受信機でつなぐタイプ。電池は最大18ヶ月もつので、交換の手間が少ない。右手にフィットする形で、手のひら全体を乗せて使える。注釈に「独立ラボによって測定された左クリックのdBA(ロジクールM170との比較)」とある。電池寿命 最大18ヶ月¥2,200 ★4.26 (115件)USB受信機/右手用の形/国内正規品楽天市場で価格を見る
手のひらを乗せて使いたい|Signature M550上の2つより一回り大きいレギュラーサイズ。単三形電池1本で最大24ヶ月動く。測定条件がいちばん細かく書かれており、「独立した研究機関が1mの距離で測定した、左クリックのdBA値。ロジクールのマウス『M170』との比較」と明記されている。測定距離1mまで明記¥3,600 ★4.54 (90件)電池 最大24ヶ月/レギュラーサイズ/国内正規品楽天市場で価格を見る
夜のパソコンが、気を使うものでなくなる
家族が寝たあとにパソコンを開いても、クリック音がリビングまで届かない。
会議中、メモを取るたびに手を止めなくてよくなる。カフェでも、隣の席を気にしないで済む。
2,000円前後で変わるのは、そこである。
売り場に数字が無い・単位が割れている話は、ドライヤーでも同じだった → 「1.6㎥/分」と「28m/秒」。どちらのドライヤーの風が強いか
本記事には広告(アフィリエイトリンク)を含みます。個数の集計は2026年9月4日に楽天市場の商品ページ(検索語「静音マウス」「マウス 静音 ワイヤレス」/重複とキーボードセットを除いたマウス単体254個)から取得したものです。価格・レビュー件数も同日時点のもので、変動します。本記事は商品ページに書かれている表示内容を数えたもので、当サイトが音の大きさを測定したものではありません。引用した注釈はいずれも各商品ページおよびメーカー公表資料の記載です。

