防災用に、あるいは車中泊用にポータブル電源を買おうとして、「何年もつのか」で止まっている。
数万円から十数万円を出すものなので、2〜3年で使えなくなるなら買わない。
売り場を開くと「リン酸鉄リチウム・長寿命・4000回」と書いてある。その「4000回」が何年なのかが分からない。
まず、その換算を先に出す。
「4000回」は何年か
充放電の「1サイクル」は、空の状態から満充電にして、また使い切るまでを1回と数える。
だから、使う頻度を決めれば年数に直せる。
| 書いてある回数 | 1日1回 使うなら | 1週間に2回なら |
|---|---|---|
| 4,000回 | 約10.9年 | 約38.4年 |
| 3,000回 | 約8.2年 | 約28.8年 |
🔴 これは割り算の計算値で、実測ではない。回数と年数を結ぶ公式が売り場に書いてあるわけではない。
そして、この割り算では出ない数字を、売り手自身が書いている。
Anker 535 の商品ページは「充放電サイクル3,000回後も初期容量の80%以上を維持」と書いたうえで、
「1週間に3回使用しても8年以上使えるので」と添えている。
1週間に3回なら年156回なので、3,000回を単純に割れば19.2年になる。売り手は、それより短い年数を書いている。
∴ 回数は、年数へまっすぐ換算できる数字ではない。
では売り場で比べるとき、どの数字を見ればいいのか。2026年10月26日1時台に、楽天の売り場を数えた。
回数は、書いてあるのに差がつかない
楽天市場APIで検索語「ポータブル電源」の1語だけを使い、上位600件から部品類を外した本体513件を数えた。
| 充放電の回数を書いている | 244件(47.6%) |
| その回数の種類 | 11通り |
| 内訳の上位2つ | 4,000回 38.9%ד3,000回 27.9% = 合わせて 66.8% |
半分近くの出品が回数を書いている。ここは、外付けSSDの寿命の数字が83件中6件しか読めなかったのとは違う(そちらは外付けSSDの記事に書いた)。
🔑 問題は、書いていないことではなく、書いてある値が揃っていることである。
11通りのうち上位2つで3分の2を占めるので、2台を並べても「どちらも4000回」で終わってしまう。
⚫ 回数を書いていない269件について、書いていないことがその製品の欠点だという意味ではない。
回数の表示を義務づける決まりは無く、書き方は店ごとに違う。
割れているのは、保証年数のほう
同じ513件で、保証年数を書いているものを数えた。
| 保証年数を書いている | 225件(43.9%) |
| その年数の種類 | 6通り |
| 内訳 | 1年 20.9%ד2年 13.3%ד3年 8.4%ד4年 1.3%ד5年 46.7%ד7年 9.3% |
回数は11通りあって上位2つに3分の2が集まるのに、保証年数は6通りしかないのに1年から7年まで散っている。
値段の中央値を、6つの階級すべてについて出す。
| 保証年数 | 値段の中央値 | 件数 |
|---|---|---|
| 1年 | ¥39,800 | 47件 |
| 2年 | ¥67,999 | 30件 |
| 3年 | ¥35,200 | 19件 |
| 4年 | ¥177,900 | 3件 |
| 5年 | ¥149,800 | 105件 |
| 7年 | ¥209,000 | 21件 |
🔴 保証年数が長いほど高い、という形にはなっていない。3年と5年の階級で、前の階級より下がっている。
🔴 4年の3件は、2つの店の3出品である(¥177,900 と ¥143,000 が同じ店、¥306,600 が別の店)。件数が少ないので、この階級の中央値は実質1出品で動く。
⚫ 件数が少ない階級も隠さずに出している。隠すと「都合のいい階級だけを並べた表」になる。
階級の中央値では形が読めないので、出品ごとの順位の相関で測り直した。
🔴 ここは、回数と保証年数の両方を書いている155件だけで測っている。
回数を書いている244件と保証年数を書いている225件は別の出品集合なので、その2つの相関をそのまま並べても、
「どちらが値段と噛み合うか」を同じ相手に対して比べたことにはならない。
| 何と何 | 相関 | 件数 |
|---|---|---|
| 保証年数 × 値段 | +0.446 | 155件 |
| 充放電の回数 × 値段 | +0.249 | 同じ155件 |
| 陰性対照(でたらめな数 × 値段を200回) | 中央値 +0.012(95%が -0.158〜+0.165) | 同じ155件 |
| 陽性対照(値段 × 値段) | +1.000 | 同じ155件 |
保証年数は、無関係な数の幅をはっきり超える。回数も超えるが、幅のすぐ上である。
⚫ 別々の集合のまま測ると保証年数 +0.545(225件)・回数 +0.297(244件)になる。向きは同じだが、件数を併記しても集合がそろったことにはならないので、上の表は両方を書いている出品だけに絞った。
∴ 売り場で見分ける列としては、回数より保証年数のほうが値段と噛み合う。
🔴 これは「寿命は保証年数で決まる」という意味ではない。保証は売り手の約束であって、電池の寿命そのものではない。
言えるのは「同じ値段帯の出品を並べたとき、保証年数のほうが違いとして出てくる」までである。
「10年」と書いてある出品の、保証は何年か
ここがこの記事でいちばん確かめたかったところである。
寿命として年数を主張している出品を数えた(「長寿命10年」「約10年以上も使用することが可能」など。
🔴 「保証◯年」は寿命の主張として数えていない)。
| 寿命として年数を主張している | 98件(19.1%) |
| 主張されている年数 | 10年 72件ד15年 12件ד5年 8件ד17年 4件ד2年 2件 |
| うち、保証年数も書いていて突き合わせられる | 75件 |
その75件を突き合わせた結果が、こうなった。
| 寿命として主張した年数 > 保証年数 | 65件 |
| 同じ | 10件 |
| 寿命として主張した年数 < 保証年数 | 0件 |
差は中央値で5年、小さいものでも3年、大きいものは14年あった。
いちばん大きかったのは、寿命17年・保証3年と書いてある1件である。
🔴 「0件」は、数え方が効いていることを確かめてから書いている。
寿命3年・保証5年という作り物の出品を1件だけ母集団に混ぜて数え直し、その1件が「寿命 < 保証」に入ることを見た。
受け皿が動くことを見たうえでの0件なので、見えていないのではなく、本当に0件である。
⚫ これは売り手が嘘を書いているという話ではない。
寿命の年数は電池の性能の見込みで、保証年数は売り手が引き受ける範囲である。別の種類の数字が、同じページに並んでいるだけである。
🔑 読む側にとって大事なのは、「10年」のほうは誰も引き受けていない数字だということである。
実物2点
同じ値段帯の2台を並べる。回数ではほとんど差がつかず、保証の条件で分かれるという形がそのまま出ている。
保証の条件まで書いてある|Anker 535(512Wh・定格500W)商品名に「長寿命10年」と出ているが、同じページの保証は「最大5年保証」で、「ご購入日時に関わらず、正規販売店で購入された全てのお客様が最大5年保証の対象となります」と条件まで書いてある。回数は「充放電サイクル3,000回後も初期容量の80%以上を維持」。PSEは届出事業者名(アンカー・ジャパン株式会社)まで記載がある。保証の対象になる条件が書いてある¥69,990 ★4.53 (504件)512Wh/定格500W/3,000回/最大5年保証/アンカー・ダイレクト楽天市場店楽天市場で価格を見る
容量は2倍で、保証の数え方が違う|TogoPower PIONEER 1000LFP(1037Wh・1000W)「サイクル回数:3000-4000回繰り返して80%まで維持」と幅で書いてあり、別の箇所に「1日1回使用しても、約10年以上も使用することが可能です」とある。保証は商品名の「3年保証付き」に対して、説明文は「ご注文日から12ヶ月のサポート(保証)が付いております、…ウェブでユーザー登録すると、最長3年間保証です」。PSEは「日本規格PSE認証」の記載。3年は登録したあとの数字だと書いてある¥63,600 ★4.68 (22件)1037Wh/定格1000W/3,000〜4,000回/12ヶ月(登録で最長3年)/TOGO POWER楽天市場で価格を見る
⚠️ この2点は「回数も保証年数も書いてある出品」から選んだのであって、性能を比べて選んだのではない。容量は 512Wh と 1037Wh で2倍違う。
⚠️ レビュー件数はそれぞれ504件と22件で、比べられる数ではない。
🔴 値段とレビューは 2026年10月29日0時台に楽天市場APIで引き直した。どちらも在庫あり。
🔴 どちらも、売り場の記載にPSEがある。
🔴 どちらも、売り場の記載に無線(Wi-Fi・Bluetooth・アプリ)の語が無い機種を選んだ。無線を持つ機種なら技適を番号まで確かめる必要があり、それが確かめられないものは選ばない。
では、どう読むか
1. 回数で絞らない。4,000回と3,000回のどちらかであることが多く、ここで差はつかない
2. 値段帯を先にそろえる。保証年数と値段は噛み合っているので、値段を揃えないと保証の長さだけを比べられない
3. 保証年数を読む。そのとき「最大」「最長」が付いていないかを見る。実物2点はどちらも条件つきだった
4. 「長寿命◯年」と書いてあっても、それは保証の年数とは別の数字として読む
買わなくていい場合
- 停電のときにスマホを充電できれば足りるなら、ポータブル電源は要らない。モバイルバッテリーで足りることがある(飛行機に持ち込めるモバイルバッテリーの記事)
- いま持っているものが、まだ使えているなら替えなくていい。売り場に新しい回数の表示が出ていることは、手元のものが壊れていることではない
- 保証の長さを気にしないなら、保証年数で選ぶ理由は無い。この記事は「同じ値段帯で何が違うか」を見分ける話である
この記事で調べたこと
- 母集団:楽天市場API/検索語「ポータブル電源」の1語だけ/標準の並び順/20ページ・1ページ30件(計600件)/商品コードの重複を1件にまとめて600件。そこから「それ自体が部品である」と言えるものを外して本体513件(外した87件=ソーラーパネル等の単体43・「ポータブル電源用/対応」28・商品名にポータブル電源が無い10・ケース/バッグ6)
- 取得:2026年10月26日1時4分〜1時5分(楽天の総件数は20,141件、値段は¥5,500〜¥550,000)。生データは
09_データ/portable_power_raw.json、母集団の作り方は09_データ/portable_power_raw.meta.jsonに残してある - 🔴 商品名に「ポータブル電源」と容量(Wh・mAh・大容量・蓄電池)の両方があれば、ソーラーパネルやバッグの語があっても本体として残した(セット販売を落とさないため)
- 中古・訳あり・箱ダメージの扱い:除かずに含めて数えている。600件の商品名に中古・訳あり・わけあり・箱ダメージ・再生品・リユースを含むものは5件あり、いずれも本体513件に残っている
- 🔴 除きすぎ・入れすぎを実測した:外した87件から無作為に10件を読んで、本体を含むセットが1件あった(除きすぎ)。残した513件から無作為に8件を読んで、走行充電器が1件あった(入れすぎ)。どちらも10件に1件ほどで、向きは打ち消し合う
- 数えた範囲:🔴 店が書いた文字だけ(商品名・キャッチコピー・商品説明)。商品ページ全体では数えていない
- 回数の拾い方:「サイクル」「充放電」の近くにある回数を拾い、300回以上20000回以下のものだけを採った
- 保証年数の拾い方:「◯年保証」「保証◯年」の形。🔴 この拾い方は年数を1桁しか読まないので、「10年保証」だけを書いた出品は落ちる。この母集団には2桁の年数を保証として書いた出品が2件あり、どちらも同じ文の先に「7年保証」があったので7年として正しく読めていたことを確かめた
- 寿命の主張の拾い方:「長寿命」「寿命」「耐用年数」「使用年数」「ロングライフ」「長期使用」の近くにある年数、または年数のうしろにそれらの語が続く形。🔴 語と数字のあいだに「保証」が入っているものは数えていない(保証の年数を寿命の主張として数えないため)。対照9件(陽性4・陰性5)が意図どおりに分かれることを、数える前に確かめた
- 見えていない範囲:
- 🔴 寿命の年数は書いてあるが保証年数が読めなかった23件は、突き合わせから外れている。そのうち18件は「保証」の語そのものはあるが、年数として読める形で書かれていなかった
- 🔴 商品ページの画像の中に書かれた字は読んでいない。楽天市場の出品は説明の多くを画像で出すので、ここに回数や保証年数が書かれていれば拾えていない
- 🔴 同じ商品を複数の店が売っている分も、別の出品として数えている(商品の数ではない)
- 相関の測り方:階級の中央値ではなく、出品ごとの順位で測った。🔴 回数と保証年数の両方を書いている155件に絞って、2つの相関を同じ集合で出した(回数だけ89件・保証だけ70件は外れている)。同順位は平均順位で扱っている。陰性対照は、その155件の値段とでたらめな数の相関を200回とって幅を出したもの。陽性対照は値段と値段。測り方は
09_データ/034_soukan_kousa.py(対照6件が意図どおりに出ることを数える前に確かめている)
本記事には広告(アフィリエイトリンクを含みます)。売り場の件数は2026年10月26日1時台に楽天市場の商品ページ(検索語「ポータブル電源」/標準の並び順の上位600件)から数えたもので、出品の数であり、商品(型番)の数ではありません。回数・保証年数・寿命の年数の記載の有無は、各出品の商品ページに書かれているかどうかを数えたもので、書かれていないことがその製品の性能や耐久性を示すものではありません。回数から年数への換算は割り算による計算値で、実際の寿命は使い方・温度・保管状態で変わります。保証の内容・期間・条件は各メーカーおよび各出品の記載によるもので、当サイトが保証するものではありません。価格・在庫・仕様・レビューは2026年10月29日0時台に確認したもので、変わることがあります。

